送電線に雪が付着し続けると、送電線が跳ね上がってさまざまなトラブルを起こしかねません。送電線には雪害を防止するプラスチック製の難着雪リングが約30cm間隔で取り付けられています。しかしこれらのリングは経年劣化した送電線の張り替え作業前にすべて取り外す必要があります。そのリング取り外し作業はこれまで人の手で行われており、送電線という高所での作業は危険かつ身体にも大きな負担がかかるものでした。そんな課題を、きんでん様の自走式難着雪リング取り外し装置と東芝のSCiB™ SIPシリーズで一挙に解決!その内容をご紹介いたします。

鉛蓄電池と接触式給電システムの組み合わせでは…

  1. 低温環境では鉛蓄電池の性能が劣化。
  2. 重い鉛蓄電池は、現地への運搬と、
    電池交換作業時に大きな負担
  3. 充電に時間がかかるので、予備電池が
    大量に必要になり管理が大変。

SCiB™ SIPシリーズとの組み合わせなら!

  1. -30℃にも及ぶ低温環境でも安定した動作。
  2. 軽量で、現地への運搬が楽。
  3. 充電時間が短いので、
    予備電池が少なくて済み管理が楽。

本事例の概要を動画でもご確認頂けます。

課題と背景

難着雪リング取り外し装置の必要性と、低温という特殊な作業環境

Q. 自走式難着雪リング取り外し装置はどのような装置ですか。

A. 送電線に取り付けている難着雪リングを取り外す装置です。

湿り気の多い雪が送電線に付着すると強風により風圧荷重が増大し、鉄塔の倒壊を引き起こしたり、雪が落下したときに送電線が跳ね上がり電線同士が接触し、短絡事故・断線を引き起こしてしまう可能性があります。そこで付着する雪が大きくならないようにするため、送電線には難着雪リングが取り付けられています。しかし、送電線の張り替え作業中にこのリングが地上に落下すると危険なため、作業前にすべてのリングを取り外す必要性があります。

この装置は、その難着雪リングを自走しながら取り外すものです。
難着雪リングは、北海道や東北などの冬場の降雪地帯だけでなく、雪が積もる可能性のある日本各地の送電線に取り付けられています。送電線を張り替える作業では、リングの落下による事故を防ぐため、一つひとつの取り外し作業は人の手で行っていました。しかしこの作業は細径送電線にも宙乗り状態で行うため、経年劣化した送電線では断線に対するリスク対応が必要となり、作業の機械化が求められていました。

浜中 秀之 様

株式会社 きんでん
京都研究所 第一研究開発部 次長

送電線についている難着雪リングが抱える課題

落下事故を防ぐため、張り替え時には取り外しが必要

負担の多いリング取り外し作業

Q. そこでこの難着雪リング自動取り外し装置を開発されたのですね。どのようにリングを取り外していくのでしょうか。

A.送電線に装着して自走しながらリングを一つひとつ外します。

自走式難着雪リング取り外し装置は、送電線上をゆっくり自動で走行し、破砕刃によってリングを取り外していきます。難着雪リングが外れなかった時は、一旦バックをして対応するので取り逃しがありません。また、飛散防止カバーやリング用受けカゴを付けるので、取り外したリングが落下することもありません。処理能力も高く、人間による作業と同じくらいのスピードで対応することができます。細径送電線では安全確保のために必要となる作業が不要となり、本装置を活用することで作業効率改善に大きな効果があることを確認できました。

効率よく雪リングを取り外す難着雪リング取り外し装置

強力な破砕刃によってリングを自動取り外し

工程コストを大幅に削減

Q. これは素晴らしいですね!動力源の方はどのようなものを使っているのですか?

A. 以前は12V出力の鉛蓄電池を活用していましたが、製品部品の仕様変更を機に24V出力が必要となり、改めて質の良い電池を探していました。

製品に活用しているモーターの仕様変更により24Vの電源が必要となりました。鉛蓄電池では元々の重量が大きいことに加え、24V出力には2つの鉛蓄電池が必要なためさらに重くなり、作業者への負担が大きくなりすぎました。また本装置の大きな特長として、その過酷な作業環境が挙げられます。冬場でも作業は行われるため、-20℃にも及ぶ低温環境でもパフォーマンスを発揮できる電池が必要でした。ここでも鉛蓄電池の、低温では性能が劣化してしまう特性がネックになり、リチウムイオン電池の中で良いものを探していました。ただ一般的に、リチウムイオン電池も低温環境下では性能劣化の問題も挙がっていたため、慎重に候補を探していたのですが、そこで出会ったのが東芝のSCiB™ SIPシリーズだったのです。

鉛蓄電池が抱えていた問題

重量が重いため、現場へ持っていく
作業者の負担が大きい

低温環境では性能の劣化が見られる

導入の決め手

低温環境でも安定稼動が可能で、しかも安全性を実現

Q. 難着雪リング取り外し装置にSCiB™ SIPシリーズを導入した決め手は何ですか。

A. 電池としての高い安全性と、低温でも安定稼働できる点が大きな魅力でした。

重要なインフラ設備で活用する装置なので、作業中の事故や故障が絶対にあってはいけません。リチウムイオン電池の過放電による過去の事故について認識していましたが、SCiB™ SIPシリーズは電池自体にBMU(バッテリーマネジメントユニット*)が組み込まれており、常に充電状態を管理してくれるため、そのような事故を未然に防げることを知りました。

また同様に安全面への配慮として、先に述べたように低温への対応も非常に気になるところでした。山間部に設置された送電線は、-20°~-10℃の非常に低温な環境となることもあります。
その点、SCiB™ SIPシリーズは温度環境の変化に強く、-30℃でも容量の70%を出力できます。さらに、他社製電池よりも充電時間や容量でもメリットを感じることができ、導入の大きな決め手となりました。この装置の使用環境とマッチする、まさに夢のような電池だと思いました。

低温環境でも安全で、パフォーマンスが落ちないSCiB™ SIPシリーズ

バッテリーマネジメントユニットによる高い安全性

低温環境でも安全に使用でき、
パフォーマンスが落ちない

導入後の効果

装置の安全で安定した運用が可能になり、作業者の負担も軽減

Q. 装置にSCiB™ SIPシリーズを採用し、どのような効果がありましたか。

A. 電池の安全と作業の安全を実現し、充電スピードと重量面で作業負担を軽減しました。

何よりも周囲温度に性能が左右されない信頼性により、装置を安全に活用できるようになりました。そもそも鉛蓄電池は低温に弱く、他のリチウムイオン電池もここまでの低温環境での活用は望めないことから、SCiB™ SIPシリーズにした効果は計り知れないものがあります。

また本装置を扱う作業者の負担も軽くなりました。作業者は昼夜問わず現場に行くことがあるので、装置運用に関する負担も重要な項目になります。鉛蓄電池は重いため現場に持っていくには大変な負担でしたし、充電にも時間がかかるため多くの鉛電池を満充電にして準備させておく必要があり管理が大変でした。このように送電線の張り替え作業から解放されても装置運用の負担が残っていましたが、SCiB™ SIPシリーズは小型・軽量で現場までの運搬負担も少なくなり、充電時間も鉛蓄電池にくらべ圧倒的に短いため予備品のストックが少なくて済み、作業者負担の少ないより安定した運用ができるようになりました。

SIPシリーズ導入後の効果

低温環境でも安全に装置を活用できる

軽量・急速充電で現場管理の負担を軽減

今後の展望

Q. 今後の展望についてお聞かせください

A. 現状はこの装置の開発が中心ですが、他の作業の機械化も視野に入れています。

今のところ、難着雪リング取り外し装置の開発をメインにし、装置自体の精度を高めたいと思います。一方、作業現場からはさまざまな機械化のニーズが出ていることも事実です。この装置にSCiB™ SIPシリーズの特性が合致したように、電池として極めて高いポテンシャルを秘めているので、現場の課題を解決する何らかの動力に活かしていけると思います。

「産業用リチウムイオン電池 SCiB™ SIPシリーズ」採用企業様のプロフィール

株式会社きんでん様

きんでん様は、電力供給を支える発変電所や送配電線工事を中心に、光伝送技術を情報通信設備に活かすなど、電力や通信をはじめとした社会インフラ構築を行っています。その事業領域は「エネルギー」「環境」「情報」の3つに分けられ、エネルギー分野では電気設備関連、環境分野では空調設備・衛生設備・地域熱供給関連、情報分野では各種通信設備や移動体通信関連で、社会の重要な役割を担っています。
「自走式難着雪リング取り外し装置」は、経年劣化した送電線の張替工事を行う際、作業中に難着雪リングが地上に落下しないよう、安全にも配慮しながら作業者の負担を軽減するために開発されました。現場のニーズを装置開発に活かすきんでん様の今後の展開が期待されます。

会社設立
1944年8月26日

本社所在地
大阪市北区本庄東2丁目3番41号

主な事業内容
電気設備、計装設備、情報通信設備、空調・衛生設備、内装設備、土木設備関連事業、省エネ・リニューアル、再生可能エネルギー、保守サービス、ESCO事業 など 

オフィシャルウェブサイト
https://www.kinden.co.jp/

今回導入した製品


SCiB™ SIPシリーズ

AGV等の駆動用
鉛蓄電池の置き換えに最適な
リチウムイオン電池

  • 専用の充電スペースが不要で、どこでも充電可能。
  • 1時間で充電。最速20分でも充電可能。
  • 寿命10年。トータルコスト削減。
  • 鉛蓄電池に比べてコンパクトで作業負担を軽減。
  • 自己診断で電池を保護・通知。
  • 鉛蓄電池のように誰でも取扱い簡単。
  • 低温でも70%以上の容量を出力。

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